バブル期の象徴的なホテルだったそうですが、コロナ禍で一度営業を終了し、その後はイベントなどでのみ使われていました。
少し前ですが、ATAMI ART GRANTという現代アートのイベントで本館が展示エリアとして使われていて、その時に内部を見学することができました。
外観。海に面してというよりは、海の上にせり出すように建っていると言った方が正確です。当時としては相当難しい構造設計で、霞が関ビルの設計チームに依頼してなんとか建設許可にこぎつけたというロマンあるエピソードが掲示されていました。
ホテル内に入って初めに見ることになったのがダンスホールです。
きらびやかなシャンデリア、大理石の柱、そして三方向に海の見える絶景が広がります。当時はここで社交ダンスなどが行われていたのでしょうか。
ATAMI ART GRANTの展示では絵がランダムに飾られていて、まるで人間の代わりに絵が踊っているかのようでした。
海に面する部分は眩しいほどの青一色で、青いカーペット、青いカーテン、そして柱は青ベースの大理石で覆われています。
続いてメインダイニング。こちらも圧倒されるようなゴージャスな空間でした。空間を遮る柱がなく、放射状の梁で支える構造がダイナミックです。
カーテンや椅子、壁紙などもとても豪華ですが、あまりにも浮世離れしているというか、時代から取り残されてしまったような切なさも感じます。
ダイニングを出て隣のエリアに進みます。
ダンスホールの利用者向けなのか、この通路にはレンタルドレスショップがあり、少し時代を感じるカラードレスがそのまま展示されていました。
こちらはエンターテインメント施設のエリアです。
ニューアカオはリゾートホテルということで、ホテルの中だけで一日遊べるような施設が充実していたようです。こちらはプール。ATAMI ART GRANTでは植物が飾られていました。
こちらはゲームセンター。廃墟のようで恐ろしさを感じます。
こちらは客室棟です。通常の客室からスイートルームまで、一部がアートの展示室として公開されていました。
どの部屋も素晴らしい眺望で、かつてはリゾートホテルとして人気があっただろうことを伺わせます。
客室に備え付けられた湯呑みがそのまま残っていました。なんとなく昭和の香りが漂います。
今の時代では考えられないような豪華さに、どこを見ても「終わってしまった場所」であることを肌で感じずにはいられない空間でした。
展示されていた作品の印象もあるのですが、この空間にいると、当時のことを知っているわけではないのになんだか感傷的な気分になってしまいました。このホテルが一番輝いていた時代を封じ込めたカプセルを見ているようでした。
なお、この本館は最近別の事業者に承継されて、最近営業が再開されたのだそうです。
この貴重な昭和の遺産は、令和の新しいホテルとして、きっと昔とは異なる形で受け継がれていくのだろうと思います。「終わってしまった場所」としての過去の輝きだけでなく、現代のリゾートホテルとして生まれ変わった姿もいつか見てみたいものです。