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それでも、日本人は「戦争」を選んだ
私たちが日本の近現代の歴史を学んで真っ先に疑問に思うのは、「なぜ他国を侵略しようと思ったのか」「なぜ負けるのが初めから分かっている戦争に挑んだのか」といったことだと思います。この本では、日清戦争から第二次世界大戦までの各戦争に至った経緯を、当時の時代の空気、問題意識、他国の状況などから総合的に理解できます。
この時期の日本というと、なんとなく陸軍が暴走して勝手に戦争を推し進めたというイメージを持っていたのですが、考え無しで戦争に踏み切ったわけではなかったことは理解できました。良し悪しは別として、日本という国は常に国防やエネルギー安全保障のことを考えて戦略的に動いてはいたのですが、一方で「策士策に溺れる」的な面も大いにあったようです。
岡倉天心が語る茶道の心。抽象的な文章でその本質を捉えるのは難しいですが、内容が理解しきれなくても、文章としてのリズム感や美しさを味わうことはできます。
印象的だったのは、「表現しきらない、完成させないことにこそ美の本質がある」という内容です。観る者はその作品における未完成の部分を想像力の働きによって補完し、作品を完成する機会を与えられ、その作品の一部分となる。現代アートにも通じる感覚だと思いますが、こういうインタラクティブなアートという概念が日本美術には古くから存在していたのかもしれません。
- WindowScape 窓のふるまい学
世界各国をフィールドワークし、文化や気候の異なる様々な地域において窓というものが果たしている役割を整理・分類した本です。
温帯に暮らす私たちにも想像しやすいのは、外光を取り入れるという機能です。光の溜まる空間を作る、光を分散させてにじませる、透かし彫りのパターンを部屋の中に出現させるなど。取り入れた光をどのように発散させるかという点に工夫があります。
しかし窓にはそれ以外の機能もあり、例えば熱帯地域には通気を目的としたガラスのない窓があって、外と内の空間をつなぐ働きをしているようです。窓枠の部分に腰掛けられるようになっていたりして、日本でいうと縁側に近い空間でしょうか。
また同じように暑い地域の話で、壁がごく小さな無数の穴で埋め尽くされている寺院も紹介されていました。外から入ってきた空気が壁の穴の中を通っていくうちに冷却され、涼しい空気を室内に持ち込むための仕組みなのだそうです。
- 着物の文様とその見方
着物によく使われる文様が季節ごとにまとまっています。
図版が多く、着物ならではの大胆な配色や抽象化されたデザインを楽しむことができます。一般にイメージされるその季節の花や鳥のほか、川、橋、薬玉や扇などの小物もポピュラーな文様となっています。季節を少し先取りするのが粋ということで、夏の着物に秋の草花を描いたりすることも多いようです。
個人的に面白いと思ったのは「源氏香」という図案です。5種類の香を順に試して同じ香りがどれだったかを当てる聞香という遊びがあり、5本の縦棒のうち同じ香りだと思ったものを横線で繋いで回答するようになっています。この横線で繋いだひとつひとつのパターンにそれぞれ源氏物語の巻名がついていることから「源氏香」と呼ばれているようです。着物の文様としては、この5本の縦棒を線で繋いだ図案が使われています。