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2020/11 読書月記

久しぶりの読書月記です。

 

  • プレモダン建築巡礼

プレモダン建築巡礼

今年手に取った中で一番自分に刺さった本がこれでした。

私は別に建築を学んだことがあるわけでもないのですが、なぜか建築物を見るのが昔から好きで、休日はよくカメラを持って見学に出かけます。この本を読むと、まるで自分が行ったような気持ちになって全国各地の名建築を楽しめます。

過去に行ったことのある場所については、より詳しい人の目線を借りて再訪するような視点で見られます。旧岩崎邸(昔このブログにも書きました)、迎賓館赤坂離宮などは、前に訪れた時のことを思い出しながら読んでいました。逆に存在だけは知っていた建物、全く知らない建物についても、詳細なイラストからその立体像をイメージし、建物の中を歩いている時の体験まで想像しながら楽しむことができます。読みやすくて気取らない解説文も好きです。

同じシリーズで、『昭和モダン建築巡礼』『ポストモダン建築巡礼』というものもあるそうなので、時代の順番で読んでみようかと思います。

 

  • 戦争は女の顔をしていない

戦争は女の顔をしていない 1 (単行本コミックス)

第二次世界大戦時のソ連の女性兵士の体験談を漫画化したもの。

洗濯部隊として爪が剥がれたり脱腸を起こすほどの重労働をさせられた話、生理の時でも男性と同じ下着しか支給されず地面を血で濡らしながら行軍していた話、自分の体重の2倍近くある負傷者を背負って何百人も救出した話など、女性兵士特有の壮絶な苦しみが語られています。

個々のエピソードにインタビュアーのコメントは挟まれず、語り手の記憶ベースで、時には話が途切れ途切れになったりしながら淡々と続いていきます。読みづらい部分もありますが、そうやって記憶が抜け落ちていたり、思いが乱れてうまく話せなくなったりするところが逆に生々しく、当時の経験の凄まじさを物語っています。

 

  • それでも、僕は泳ぎ続ける。

それでも、僕は泳ぎ続ける。 心を腐らせない54の習慣

入江選手というと日本水泳界を代表する(私でも知っているような)スター選手で、揺るぎない自信をもって競技に取り組んでいるというイメージを勝手に持っていました。ただこの本を読むとそんなことはないようで、あれだけの輝かしい成績を残しながらも、劣等感にさいなまれ、結果が出せない時はどん底まで落ちたりもして、それでも強い意志で上を目指してきた人なんだということを初めて知りました。

心が強いということには、そもそも落ち込まないか、落ち込むけれどもその後に必ず立ち上がれるかの二種類があると思っています。そして自分のようなネガティブ寄りの人間が目指すべきは後者、落ち込んだ後にしっかりリカバリーができるようになることだと思って、長い間自分の心と向き合ってきました。これは、そうやって落ち込んでしまったところから再び立ち上がろうとしている人の背中を押してくれる本です。

大きな試合で連敗して絶望し、Twitterで「自分が弱いのが辛い」と呟いたら、北島康介選手から「弱いから辛いんじゃなくて強いから辛いんだ」と返信が来て泣いてしまった、という話がとても印象に残っています。自分の全てをかけて戦い、その結果と向き合い続けてきたアスリートだからこそ、その言葉が出てくるのだと思います。私自身が自分の無力さに辛くなってしまった時も支えにしようと思った言葉でした。