R

2020/7 読書月記

なんとなく1月空いてしまいました。

 

  • もののたはむれ

もののたはむれ

何かの間違いで日常生活の隙間からふと幻想の世界に迷い込んでしまったような、夢と現実のあわいをさまよう体験を描いた短編集。繊細で美しい文体で、日常の向こう側にある世界の鮮やかな色彩が絵として浮かぶようです。

「並木」がとても好きでした。普通の民家の一室としか思えない喫茶店で、一人ぼんやりと過去の記憶にひたる話です。誰にも見つからずに他人の家に入り込んでしまったような違和感と、曖昧な空間に匿名的に存在していることの安心感は、うまく思い出すことができませんが自分自身の小さい頃の記憶のどこかにもあるものでした。最後の締めにハッとさせられます。

 

ジョジョの奇妙な冒険(第4部) ダイヤモンドは砕けない 文庫版 18-29巻セット (化粧ケース入り) (集英社文庫)

3部とはうってかわって超ローカルな話でした。登場人物が一致団結するのではなく、それぞれの思いや変なこだわりで好き勝手に行動しているところが好きでした。いかにも等身大の高校生という感じで。

一番好きなシーンは億泰の食レポのところです。

 

  • ウィニング・アローン

ウィニング・アローン――自己理解のパフォーマンス論

トップを目指すために何を考えて練習をするべきか、あるいは自分自身をどのように理解し、どう向き合っていくべきかということが、トップアスリートの視点で書かれています。

私はスポーツには全く縁のない人間ですが、彼のブログやTwitterを読んでいると、資格の受験をしていた頃のことをいつも思い出します。その資格に無事合格し、今は戦うことから降りてしまった身ですが、当時の濃密な体験は私のこれまでの人生のクライマックスであり、今の自分の価値観の半分以上を形作っています。

そのため、この本に書いてある身体のコントロールのことはほぼ理解できませんが、心のコントロールの方についてはある程度の実感を持って理解することができました。言葉の扱い方、敗因の振り返り、短所との向き合い方など。自分が当時意識的にやっていたこともあれば、無意識のうちにできていたからこそうまくいったのだろうと思われることも、結局最後までできずに苦しんだこともあります。

 

何かに真剣に取り組むということの本質は、自分の醜い部分、弱い部分と向き合うことにあると私は考えています。自分は素の状態では弱い生き物だという前提に立って、自分の心の発するメッセージを素直に受け止め、「考え方の癖」に応じてうまくコントロールしていく技術は、アスリートでなくても、何かを成し遂げようとする人にとって必ず役に立つものだと思います。