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ホキ美術館

写実絵画を専門とする美術館です。

www.hoki-museum.jp

 

外観。展示室の一部が片持ちで突き出したデザインになっています。

訪れる前、宙に浮いているように見えるのは写真のマジックなのかなと少し疑っていたところがありましたが、実物を見ると本当に浮いていました。浮いている部分の長さはなんと30mにも及ぶそうです。

 

真下から見ると圧がすごいです。ここだけ物理法則が歪んでいるように感じます。

 

構造的にはこの箱は後ろに長く続いていて、飛び出している部分の根元だけでなく、奥の方にも重さを支える機構があるのだそうです。単純化すると、2本の頑丈な柱の上に、柱の間隔よりも長い箱を乗せている構造だと理解しました。

この片持ち部分は1ヶ所の支持で成り立つとは到底思えない大きさですが、2ヶ所で支えていると思うと感覚的にぎりぎり理解できる気がします。

 

横に回ると、この片持ち構造を支えている2ヶ所のコアを見ることができます。目立たないですが、よく見ると反対側も少し先端が浮いていました。

 

 

外観を見ただけで既に鑑賞を終えたような気持ちになりますが、本題である美術館の中には逆側から入ります。

ライトが傾きをつけてランダムに立っているのが面白いです。周囲にある木の角度と合わせているのだそうです。

 

ゆっくりとスロープを上っていくと視界が開けて、左手に美術館の入り口が現れます。広い空と周辺の木々が爽やかで、住宅街の中とは思えない非日常感があります。

 

室内は撮影禁止ですが、緩いカーブを描いた通路のような展示空間になっていて、自然に奥へ奥へと導かれるような不思議な感覚があります。

細長い箱が折り重なったようなこの建物は見た目よりも案外深さがあり、展示室は地下2階まで続いています。展示室の中にはその深さを活かした天井の高いスペースもあり、真っ白な空間にたくさんのダウンライトがきらめく様子は白いプラネタリウムのようでした。そして次の展示室に進むと逆に真っ黒な空間になっていて、そのコントラストにはっとさせられたりもしました。

 

構造設計の力を体感できるとても面白い建物だと思います。この構造を実現するためにはきっとさまざまな技術的な挑戦があったことでしょう。素人ながらその挑戦に敬意を表したいと思った作品でした。