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刀剣博物館

日本刀を専門に展示する博物館です。

www.touken.or.jp

 

この建物は旧安田庭園という見事な日本庭園の端に建てられています。設計は槇文彦です。

 

建物自体は和を意識したデザインという感じはしないのですが、周囲の木に合わせて高さを抑えた作りで、コンクリートの描く緩やかなカーブが庭園にマッチしています。

 

庭園側は曲面で構成されていますが、その反対側にある博物館の入り口は直線的でシャープな印象を与えます。ここのコンクリートは木目を写し取っています。

 

建物横の扉。周囲の緑がうっすらと映っていてきれいです。

 

室内に入ると、大小さまざまなライトに照らされた、開放的で暖かみのある空間が広がっています。

私は刀剣には詳しくなく、日本刀というと尖っていて、硬質で、怖いイメージを持っていました。そのためこの博物館もシャープなデザインなのかと思っていたのですが、驚くほど軽やかで優しい空間で、そのギャップが強く印象に残りました。

 

特にこの繊細なドレープの照明が素敵です。よく見てみると布の中にライトが入っているだけのシンプルな作りのようです。

 

このドレープ状の照明以外にも、ライトには相当なこだわりを感じました。こちらは階段。円形の照明がランダムに配置されています。

 

この照明の光が階段周辺に使われているさまざまな素材に反射して、それぞれ異なる映り方をしています。このような素材に対する細やかな意識は、もしかすると刀剣の楽しみ方に通じるのかもしれないと想像したりしました。

 

こちらは館内のいろいろな場所に設置されている間接照明。やはり暖かみのある光です。

 

最上階の3階は一部が屋上庭園になっていて、旧安田庭園を上から見渡せます。隣にある両国国技館まで含めて全てが完成された構図です。

 

柔らかい光、異なる素材の取り合わせにこだわりを感じる、洗練された美しい建築でした。私が日本刀に明るくないだけで、刀というのは本来この建物のように、素材の美しさを引き出す暖かみのある芸術なのかもしれないと思ったりしました。