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2020/12 読書月記

  • Think right

Think right 誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法

意思決定を誤らせるありがちな先入観(52個)について説明している本です。「生存バイアス」「サンクコスト」「ハロー効果」など有名なものもありますが、先入観というのは他にも数え切れないほど存在するようです。

そしてそういった先入観というのは、場合によっては人類の生存本能として培われてきたものであったりします。例えば、狩りをしていて前を進んでいる人が突然逃げ始めたら、その理由が分からなくてもとりあえず自分も逃げないと死んでしまいます。ただ株やFXで同じ行動を取ったら損しそうですね。この複雑な現代社会は、もしかすると人間という生物が自然体では生きづらいレベルにまで進化してしまったのかもしれないと思いました。

いろいろな先入観の中で、私が特に気をつけようと思ったのはこのあたりです。

  • 山のようにある選択肢の中で完璧なものを選ぶことはできない。選ぶこと自体がストレスになり、選ぶのをやめたり、変な条件で絞り込んで不幸な選択をしてしまったりする。 →完璧主義はやめて、最初から「まずまずの答え」で満足するつもりでいた方が結果的に良い選択ができる。
  • 一貫性のあるストーリーを作るために、そのストーリーに合わない事実を無視してしまいがち。 →そのストーリーから外れている事実がないか検証する。特に私の場合は悲観的なストーリーを組み立てがちなので、ポジティブな事実を無視していないかきちんと探す。
  • 偏った方向に動いたものは、すぐに偏りが解消されるように反対方向に動くことが多い。痛みがひどい時に病院に行ったら良くなったというのは、単に普通の状態に戻っただけで、病院に行かなくても同じ結果になっていたかもしれない。 →治療、トレーニング、練習などの効果があったかどうかの判断は慎重に。

 

  • だから私はメイクする

だから私はメイクする

美意識について15人の一般女性が匿名で語っているエッセイ。漫画化とドラマ化もされました。日頃友人と美容関係の話はしても、この本のように「何のために装うのか」というところまで突っ込んだ話をすることはそうそうないのではないかと思います。

推しているアイドルにかわいいと言われるためにメイクしたり、コスメが趣味でTwitterでコスメアカウントを運営する「自分のために」派。デパートの販売員として相応しい装いをするため奮闘する人や、マネージャーに怒られて泣きながらメイクを覚えた元アイドルなど「他人のために」派。スナックに体験入店しようとしたら制服が入らなくてショックを受けたことをきっかけにダイエットを決心した人、ドバイの美容サロンで働いて自意識に対する見方が変わった人など「何かを探して」派。それぞれの人の美容に対する情熱(人によっては執着)が赤裸々に綴られていて、今まで知らなかった趣味の沼を発見したり、見てはいけない自意識の深い部分を覗き見てしまったような気持ちになったりします。

 

  • アイドル、やめました。

アイドル、やめました。

AKBグループの元アイドル8人の卒業後のキャリアについてインタビューした本です。

自身も元アイドルである著者が最初に語っている言葉が、自分と重なって心に突き刺さりました。「アイドル時代の経験をどう成仏させたらいいのかわからなかった」「元アイドルという大きな十字架を背負うことが、誇りであると同時に大きなコンプレックスだった」。私の場合はアイドルではありませんが、夢を追いかけて捨てたことのある人間には心当たりのありすぎる言葉でした。当時の濃密な経験にどこかで折り合いをつけて新しい平凡な日々を生きていかなければならない、というか自分自身が何よりもその「平凡な日々」を渇望していたはずなのに、戦う日々はもう終わったんだということをまだ整理しきれていない自分がいます。

ただ誰の話を読んでも、アイドルのように壮絶な競争をくぐり抜けてきた人は、自分自身のことをしっかり理解していると感じます。だから次のキャリアとして本当にやりたいことを見つけて、力強く進んでいけるのでしょう。彼女たちの話を読んで、自分自身もできたらそうありたい、過去をきれいに「成仏」させられなくてもいいので、せめて自分のやりたいことに正直に生きられるようになりたいと思いました。